
マンションの大規模修繕では、共用部である鉄骨階段の改修が検討課題になることがあります。日常的な歩行に加えて雨水や湿気の影響も受けやすく、経年とともにウレタン塗膜の膨れ、剥離、摩耗、錆の発生などが見られる場合があります。
こうした不具合が生じた際、見た目の劣化に注目しがちですが、実際には既存塗膜の下で鉄部の腐食が進行している可能性もあります。そのため改修を検討する際は、単に表面を塗り替えるだけでなく、既存ウレタン層を除去した後の下地をどのように整えるかが重要なポイントになります。
鉄骨階段の改修で生じやすい課題
鉄骨階段の改修現場では、表面に見えている劣化だけでなく、下地にさまざまな問題を抱えているケースがあります。たとえば、次のような状態が見られます。
- ・既存塗膜の劣化
膨れ、剥離、密着力の低下などが生じている場合があります。 - ・防水性能の低下と鉄部の腐食リスク
表面の摩耗や錆の発生、水分の浸入によって鋼材の腐食が進行していることがあります。 - ・下地状態の不良
腐食痕、微細な凹凸、不陸などにより、表面状態が不安定になっている場合があります。
このように、鉄骨階段の改修では、塗膜の劣化、錆の進行、下地の不陸など、複数の問題が重なっているケースも少なくありません。見えている不具合だけで判断せず、下地の状態を丁寧に確認することが重要です。
改修の検討で重要になる「下地処理」という視点
鉄骨階段のウレタン防水層改修工事では、防水材の種類や仕上がりに意識が向きやすい一方で、改修品質を確保するうえでは、下地処理も重要な要素です。
特に、事前に確認しておきたいポイントとしては、次のような点が挙げられます。
- ・防錆性への配慮
鉄部が露出する箇所に対して、防錆面に配慮した対応ができるか。 - ・下地調整性
ケレン後に残る腐食痕や凹凸を適切に調整できるか。 - ・防水層の密着性への配慮
新設するウレタン防水層が、安定して密着しやすい下地をつくれるか。 - ・複雑な形状への施工性
階段のように形状変化の多い部位にも施工しやすいか。
改修の検討では、何を上から施工するかだけでなく、その性能を安定して発揮できる下地をどのように整えるかまで含めて考えることが重要です。下地処理は、改修後の密着性や耐久性を左右する、重要な判断ポイントのひとつです。
事例紹介:鉄骨階段のウレタン層改修工事
※本事例で使用した下地調整材:KANパテ 鉄メタル
※実際の採用にあたっては、現場状況に応じた材料・工法の確認が必要です。
本事例では、マンション大規模修繕工事における鉄骨階段のウレタン防水層改修工事を実施しました。
既存の劣化したウレタン防水層を除去し、鉄部の状態を整えたうえで、新たな防水層の施工に向けた下地調整材として金属パテを使用しています。その後、防水層の施工から長尺シートの貼り付けまで含めて、仕上げを行なっています。
施工の流れ
下地処理の工程では、錆除去後の鉄部に残る腐食痕や微細な凹凸を調整し、その後の防水層施工に移行しやすいよう下地を整えました。
1. 既存塗膜の除去
既存ウレタン層を除去
2. 下地処理
ケレン・錆除去→清掃 →腐食部補修・不陸調整 → 研磨 → 錆止め処理
3. 防水層施工
プライマー塗布 → ウレタン防水施工 → トップコート施工
4. 仕上げ
長尺シート貼り付け
写真で見る施工実例
1. 既存層撤去~ケレン後:鉄部の状態確認
既存ウレタン層を除去し、ケレン・錆除去・清掃を実施。 表面には腐食痕や不陸が残っており、下地調整の必要性が確認されました。



2. 下地処理:腐食部補修・不陸調整
下地処理材として金属パテを用い、腐食部の補修および不陸調整を行いました。さらに研磨により表面を平滑化し、段差を整えることで、その後の防水層施工に適した下地を形成しました。

3. 防水層施工
下地処理後にプライマー、ウレタン防水、トップコートを施工します。

4. 仕上げ
最後に長尺シートを貼り付けて完成です。


このように、改修後の仕上がりや維持管理を考えるうえで、下地処理は見逃せない工程の一つです。下地の状態に応じて、防錆への配慮、不陸調整、防水層の密着性を意識した工程を組み立てることが、その後の施工品質を考えるうえでも重要です。
本事例で使用した下地調整材

『KANパテ 鉄メタル』は鉄粉を高配合した工業用の金属パテで、特別な技術や火気を必要とせず使用できます。腐食した設備の再生補修や金属材の肉盛り、穴埋めに適しています。
※詳細な施工条件・適用可否は製品ページ・カタログ・TDSをご確認ください。
