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何度も起きたヒヤリハット!自分たちで施工できる滑り止めコートは、労災防止のカギになった
上野様(相鉄バス株式会社 綾瀬営業所 車両施設課)

神奈川県横浜市西区に本社を置き、相鉄グループのバス事業を担う相鉄バス株式会社。同社は神奈川県内に3つの営業所(綾瀬、旭、横浜)をもっていますが、その中の1つ、綾瀬営業所では従業員の休憩所へ向かう階段で問題が起きていました。屋根のない鉄製の階段は雨に濡れるととても滑りやすく、ヒヤリハットが頻発していたのです。万が一、従業員が階段から落ちてしまうような事故が発生すれば、これは労働災害事案となります。はじめは滑り止めテープを階段に貼って対応していたのですが、テープは剥がれやすく抜本的な対策が必要になっていました。今回は、相鉄バス株式会社 綾瀬営業所 車両施設課の上野様にお話を伺い、労災事故を防ぐために導入された、関西パテ化工株式会社の「滑り止めコート」についてご紹介していきます。

幸い事故はなかったが、ヒヤリハットは何度も起きていた

━ はじめに相鉄バス様の綾瀬営業所について教えてください

綾瀬営業所は相鉄バスに3カ所ある営業所の1つで、その名の通り神奈川県の綾瀬市にあります。営業所は車両の発着基地で、ここには駐車スペースや整備スペース、事務所、従業員の休憩所などがあります。綾瀬営業所には10名の整備士がおり、私も入社以来整備畑を歩いてきています。現在は管理部門である車両施設課に在籍しており、ここのメンバーは6名です。車両施設課は、バスの整備だけでなく新車の購入なども担当する部門となっています。

━ 綾瀬営業所のどのような場所で問題が発生していたのですか?

従業員各自のロッカーや宿直部屋もある、休憩室へ行く途中の階段です。休憩室は2階にあるのですが、そこへ行くには屋根のない場所に設置してある鉄製の階段(いわゆる外階段)を使う必要があるのです。この階段の段には多少の凸凹が付いているのですが、厚く塗装されているため、雨が降るととても滑りました。幸い転落事故は起きていませんでしたが、ヒヤリハット(※)は何度もあって、いつ労災事故が起きてもおかしくない状況でしたね。この階段は整備士を含む従業員が頻繁に行き来しますから、彼らの中でも危ないと話題になっていました。 

以前は滑り止めテープで対策していたが、すぐに剥がれてしまった

━ 以前は何か対策をしていなかったのですか?

今回のような滑り止めコートを使う前は、滑り止めのテープを使っていました。滑り止めに一定の効果はありましたが、すぐに剥がれてしまい、剥がれては貼って剥がれては貼っての繰り返し。また、残っていても表面が汚れて使い物にならなくなってしまい、抜本的な対策としては不十分でした。

━ 抜本的に対策しようという検討はされましたか?

もちろんです。実はこういった施設の修繕などは施設担当の仕事で、本来我々の担当ではありません。数年後には施設の大規模修繕が計画されていたので、そこで抜本的な対策をお願いしたいと考えていました。まず考えたのは屋根。濡れて滑るなら屋根を設置して雨に濡れないようにすればいいという考え方ですが、予算が足りず断念せざるを得ませんでした。施設担当に滑り止めテープ以外の方法について相談したのですが、彼らも大規模修繕の準備で忙しい。仕方がないので現場側で対策しようと。自分たちでやるから材料代だけ出してくれと交渉しました(笑)これが2019年の夏頃だったと思います。

自分たちで施工できる!ここがポイント

━ すぐに滑り止めコートの予算は下りたのでしょうか?

緊急修繕は仕方ないのですが、本来このような修繕は事業計画(修繕計画)の中で策定します。課長や部長といった要職が計画と予算を決め、大規模な修繕であれば所長決裁になります。今回は外部に委託せず、自分たちで施工することで予算を抑えることができました。施設担当に材料代を相談してから、1カ月くらいで予算が下りましたね。

━ 滑り止めコート以外の別の手段は検討されなかったのですか?

少しだけ検討しました。以前使っていたものとは別のメーカーの滑り止めテープを検討したのですが、値段が高かった。これでまた剥がれた、再度貼った、を繰り返すのでは意味がないということになりました。他にもさまざまな製品をカタログや資料で検討しました。工場向けのプロ仕様のものもあったのですが、これは値段が高かった。そんなとき、三京塗料様から関西パテ化工様の滑り止めコートを紹介いただいたのです。その資料には塗布見本が付いていて、これだけ凹凸ができるなら使えそうだ、と確認できました。実物を見られたのは大きかったです。最終的に決めたポイントは金額もありましたが、自分たちで施工できること、そしてテープに比べて剥がれにくいこと。それで早速購入することにしたのです。

━ 実際の施工はどのように行いましたか?

施工は整備士2人で行いました。養生テープで塗るところを決め、滑り止めコートをコテで塗りました。左官屋さんがやる作業に近かったですね。階段の端にコート剤を盛ってから伸ばす感じ。塗る作業は1日で終わりました。乾く間は別ルートで休憩室に行くように皆に指示しましたが、翌日には乾いていました。乾燥が早くて助かりましたね。

━ 関西パテ化工の滑り止めコートにはご満足いただいていますか?

とても満足しています! 整備士からもすごく好評です。労災防止に大変役立っていると思います。雨の日でも安心して階段を上り下りでき、黄色で目立っているところも、すごくいいですね。暗くても目立つので夜間でも階段を視認しやすくなりました。これだけ視認性がいいなら、屋内の工場で暗いところにも滑り止めとして使えますね。正直なところ、テープに比べて塗る手間はかかりますが、効果はこちらの方が高いように思います。結果としてはこちらが大正解でした。

また、いくら保つといっても5年くらいが良いところかな? と考えていました。ところが2019年の施工からもう6年経ちますが、まだまだ大丈夫です。これなら10年くらいは保ってしまうだろうなと思います。滑り止めコートの耐久性にも満足しています。

これからも、無事故・無災害を目指していく

まだ他の営業所(旭営業所、横浜営業所)には、滑り止めコートは導入されていません。もちろん、活用できる場所があるかどうかはまだわからないのですが、相鉄バスはあらゆる事故に対する取り組みとして、決して労災を出さないこと、そのためには手を打てるところは先回りして手を打っていくべきだと考えています。事故の予兆を示すヒヤリハットには、とても神経を使います。事故の発生につながらないよう、これからも無事故・無災害を目指していきたいと考えています。

━ 本日はどうもありがとうございました!